SAM 3.1 導入ガイド

LoomStroke の AI Select(AI による自動選択)を使うために必要な、SAM 3.1 の準備方法を説明します。作業は 30 分〜1 時間ほどです(回線速度によってはさらにかかります)。

1. SAM 3.1 とは

SAM 3.1 は Meta が公開している画像の領域分割(セグメンテーション)AI です。LoomStroke では次の機能がこれを使います。

SAM 3.1 は LoomStroke 本体とは別の、専用の実行環境(自分の PC の中で動く小さなサーバー)として動きます。LoomStroke の「セットアップ」ボタンがこの環境を自動で作りますが、モデル本体(チェックポイント)だけは自分でダウンロードして置く必要があります。LoomStroke がモデルを自動でダウンロードすることはありません。

SAM 3.1 は画像を外部に送らず、すべて自分の PC の中で処理します。インターネットを使うのは、導入時の部品(PyTorch など)のダウンロードと、モデルの入手のときだけです。

2. 必要なもの

項目内容
OSWindows 10 / 11(64 bit)
GPUNVIDIA 製 GPU(CUDA 対応)を強く推奨。開発時の検証(RTX 4090)では、画像 1 枚の処理で GPU メモリを最大 約 4.6 GB 使いました。GPU メモリ 8 GB 以上あると安心です。
GPU がない場合も導入自体は進みますが、最後の動作テストで「CUDA が使えない」と表示されて止まります(CPU だけでは実用的な速さになりません)。
NVIDIA ドライバー新しいドライバー。セットアップは CUDA 13.0 版の PyTorch を入れるため、コマンドプロンプトで nvidia-smi を実行して右上の「CUDA Version」が 13.0 以上 であることを確認してください。足りない場合は NVIDIA の公式サイトからドライバーを更新します。
PythonPython 3.12 以上(3.13 推奨)。LoomStroke とは別に、PC に入っている必要があります(手順 1)。
ディスクの空き目安 15 GB 以上(モデル 約 3.5 GB + PyTorch など数 GB + 作業用)。
インターネット導入時のみ必要(PyTorch で数 GB のダウンロードがあります)。
Hugging Face アカウントモデルの入手に必要(無料)。

3. 導入手順

手順 1 Python 3.12 以上を入れる

  1. python.org から Python 3.13(または 3.12)の Windows 用インストーラーをダウンロードします。
  2. インストーラーを起動し、「py launcher」(Python ランチャー)が入る設定のままインストールします。
  3. コマンドプロンプトで次を実行し、Python 3.13.x のように表示されれば完了です。
    py -3.13 --version

セットアップは py -3.13 → py -3.12 → py -3 → python の順に Python を探し、3.12 以上の最初に見つかったものを使います。

手順 2 SAM 3.1 用のフォルダーを作る

モデルと実行環境を置くルートフォルダーを作ります。空き容量の多いドライブに、半角英数字だけのパスで作るのがおすすめです。

例:D:\SAM31

このフォルダーに、手順 3 でモデルを置き、手順 5 のセットアップで実行環境(runtime フォルダー)が自動で作られます。

手順 3 モデル(チェックポイント)を入手する

SAM 3.1 のモデルは Hugging Face の facebook/sam3.1 で公開されています。このページはアクセスに同意が必要(ゲート付き)です。

  1. Hugging Face にアカウントを作り、ログインします。
  2. facebook/sam3.1 を開き、利用条件を読んで、連絡先の共有に同意してアクセスを申請します。承認されるまで少し待つことがあります。
  3. 承認後、「Files and versions」タブから リポジトリのファイル一式(sam3.1_multiplex.pt(約 3.5 GB)と config.json などの設定ファイル)をダウンロードし、手順 2 のフォルダーに置きます。

コマンドに慣れている場合は、Hugging Face の公式ツールでまとめて取得できます(ブラウザーでアクセス承認を受けた後に実行します)。

py -3.13 -m pip install -U huggingface_hub
hf auth login
hf download facebook/sam3.1 --local-dir D:\SAM31

hf auth login では、Hugging Face の設定画面(Access Tokens)で作った読み取り用トークンを貼り付けます。hf コマンドが見つからない場合は、Python のインストール時に「Add python.exe to PATH」をオンにしてから入れ直すか、ブラウザーでダウンロードしてください。

モデルは、ルートフォルダーの直下、または checkpoints・model サブフォルダーに置けます。ファイル名が sam3.1_multiplex.pt ならそれを使い、違う名前の場合は .pt ファイルが 1 つだけのときに限りそれを使います(複数あると判断できず「見つからない」扱いになります)。LoomStroke はモデルをコピーも移動もしません。

手順 4 LoomStroke で外部サービスへの接続を許可する

セットアップ中に PyTorch などをダウンロードするため、通信を許可します。

外部AIサービスを許可
1インターフェース 2外部AIサービスを許可 3適用
  1. 編集 › 環境設定(Ctrl+,)を開き、1「インターフェース」を選びます。
  2. 2「外部AIサービス (ComfyUI, LLM Gateway, NanoBanana) を許可」をオンにします。
  3. 3「適用」を押して保存します。セットアップは保存済みの設定を見るので、オンにしただけで適用しないと「ネットワークの許可が必要」で止まります。

手順 5 セットアップを実行する

SAM 3.1 設定
環境設定 › SAM 3.1(未設定の状態)
  1. 環境設定の左の一覧で SAM 3.1 を選びます。
  2. 1「SAM 3.1 ルートフォルダー」の「参照...」で、手順 2 のフォルダーを選びます。3状態の「チェックポイント」にファイル名が表示されれば、モデルが見つかっています。
  3. 4「セットアップ」を押します。7のログ欄に経過が流れ、次の 10 段階が順に進みます。
段階内容かかる時間の目安
1. フォルダー確認ルートフォルダーがあり書き込めるか確認し、runtime・logs・state フォルダーを作ります。すぐ
2. Python 確認Python 3.12 以上を探します。すぐ
3. 環境の作成SAM 3.1 専用の仮想環境(runtime\venv)を作ります。LoomStroke 本体の環境には触れません。1 分程度
4. pip の準備部品を入れる道具(pip)を用意します。すぐ
5. PyTorch の導入NVIDIA GPU を検出したら CUDA 版、なければ CPU 版の PyTorch をダウンロードして入れます。数分〜数十分(数 GB)
6. SAM 3.1 の導入必要な部品と、SAM 3 のプログラム(GitHub の facebookresearch/sam3)を入れます。数分
7. モデルの確認ルートフォルダーにモデルがあるか確認します(ダウンロードはしません)。すぐ
8. 動作テストモデルを読み込んで、SAM 3.1 用のモデルであること、GPU(CUDA)が使えることを確認します。数分
9. ワーカーの起動SAM 3.1 の処理役(ワーカー)を起動します。数十秒
10. 応答確認ワーカーが正しく応答するか確認します。すぐ

ログの最後に 「SAM 3.1 Ready」と表示されれば完了です。3状態欄が「ランタイム: Ready」「チェックポイント: sam3.1_multiplex.pt」「ワーカー: running」のようになり、GPU 名(CUDA)も表示されます。OK で環境設定を閉じます。

途中で失敗したり4「キャンセル」で止めたりしても、もう一度「セットアップ」を押せば、終わっている段階は飛ばして続きからやり直します。最初からやり直しにはなりません。

手順 6 動作を確かめる

  1. キャンバスに画像を開き、ツールバーから AI Select を選びます(選択グループのボタンを長押し)。
  2. プロパティバーの「Prompt」に探したいもの(例:hair、person、flower)を入れ、「Run」を押します。
  3. 候補が色付きで表示されれば成功です。「Apply」で選択範囲になります。

初回の実行はモデル(約 3.5 GB)を GPU に読み込むため、少し時間がかかります。ワーカーが止まっている場合は、実行時に自動で起動します。

4. SAM 3.1 設定画面

環境設定 › SAM 3.1 の各項目です(番号は手順 5 の画像に対応)。

項目内容
1SAM 3.1 ルートフォルダーモデルと実行環境を置くフォルダー(参照... で選択)。
2SAM 3.1 サーバーを自動起動オンにすると、LoomStroke の起動時にワーカーも起動します(モデルの読み込みは、実際に使うときまで行いません)。初期値はオフ。オフでも AI Select の実行時に自動で起動します。
3状態 ランタイム:準備が整っていれば Ready。足りないものがあると理由のコードが表示されます(一覧)。
チェックポイント:見つかったモデルのファイル名(なければ「未検出」)。
ワーカー:running(起動中)/stopped(停止中)。
モデル:loaded(GPU に読み込み済み)/unloaded(未読み込み)。
CUDA:ワーカー起動中に、使っている GPU の名前を表示します。
4セットアップ / キャンセル実行環境を準備する / 準備を途中で止める。
5起動 / 停止 / 再起動ワーカーを手動で操作します。
6モデルをロード / モデルをアンロードモデルを GPU メモリに読み込む / GPU メモリから降ろす(ワーカーは動いたまま)。
7ログ欄セットアップや起動の経過、エラーの内容と対処方法を表示します。
8アセットキャッシュ上限解析結果(マスクなど)を保存しておく容量の上限。64〜262144 MB、初期値 2048 MB。

5. フォルダーの中身

D:\SAM31\                      ← ルートフォルダー(手順 2)
├ sam3.1_multiplex.pt          ← モデル(手順 3 で自分で置く)
├ config.json ほか              ← モデルの設定ファイル(同上)
├ checkpoints\ / model\        ← (直下に置かない場合のモデルの置き場所)
└ runtime\                     ← セットアップが自動で作成
   ├ venv\                     ← SAM 3.1 専用の Python 環境
   ├ sam3-src\                 ← (任意)オフライン導入用の SAM 3 ソース
   ├ logs\setup.log            ← セットアップのログ
   ├ logs\worker.log           ← ワーカーのログ
   └ state\

6. GPU メモリの扱い

SAM 3.1 はモデルを GPU メモリに読み込んで使います。ComfyUI など他の GPU を使う作業と同時に行うときは、使い終わったらメモリを空けると安定します。

AI Select Candidates パネルの「SAMメモリを解放」モデルを GPU メモリから降ろします。次に使うとき自動で読み込み直します。
環境設定 › SAM 3.1 の「モデルをアンロード」同上。
環境設定 › SAM 3.1 の「停止」ワーカー自体を止めます(次の実行時に自動で起動)。

7. うまくいかないとき

失敗するとログ欄に [コード] 内容 と対処方法が表示されます。詳しいログは ルートフォルダー\runtime\logs\setup.log(セットアップ)と worker.log(実行時)にあります。

コード意味対処
ROOT_NOT_CONFIGUREDルートフォルダーが未設定環境設定 › SAM 3.1 でルートフォルダーを選びます。
ROOT_INVALIDフォルダーがない/書き込めない存在する、書き込み可能なフォルダーを選びます。
SETUP_REQUIRED実行環境がまだない「セットアップ」を実行します。
CHECKPOINT_MISSINGモデルが見つからない/SAM 3.1 用のモデルではない手順 3 のとおり sam3.1_multiplex.pt と設定ファイルをルートフォルダーに置きます。.pt が複数あるときは不要なものを移動します。
PYTHON_UNSUPPORTEDPython 3.12 以上が見つからない手順 1 で Python を入れます(py launcher から見つかる必要があります)。
NETWORK_CONSENT_REQUIREDダウンロードの許可がない手順 4 で「外部AIサービスを許可」をオンにして適用してから、もう一度セットアップします(メッセージには「Privacy」と出ますが、設定はインターフェースのページにあります)。
VENV_CREATE_FAILED専用環境を作れないディスクの空き容量とフォルダーの権限を確認して再実行します。
PIP_FAILEDpip を準備できないもう一度セットアップします。
TORCH_INSTALL_FAILEDPyTorch の導入に失敗ネットワークと setup.log を確認して再実行します。
SAM31_INSTALL_FAILEDSAM 3 本体の導入、または動作テストに失敗setup.log を確認します。オフライン導入は8 章。
CUDA_UNAVAILABLEGPU(CUDA)が使えないNVIDIA GPU とドライバーを確認します。CPU だけでは実用的な速さになりません。
CUDA_MISMATCHPyTorch とドライバーの CUDA が合わないNVIDIA ドライバーを更新してから、もう一度セットアップします。
WORKER_START_FAILEDワーカーが起動しないworker.log を確認します。
HEALTH_FAILED起動したが応答しない「再起動」を試し、だめなら worker.log を確認します。
MODEL_LOAD_FAILEDモデルの読み込みに失敗worker.log を確認します。モデルファイルが壊れている場合は入れ直します。
OOMGPU メモリ不足ComfyUI など他の GPU を使うアプリを閉じるか、そちらのメモリを解放してから再実行します。
COMPATIBILITY_UNSUPPORTED入った SAM 3 の版が未対応LoomStroke の更新を待つか、開発者に報告してください。
CANCELLEDセットアップを中止したもう一度「セットアップ」を押すと続きから再開します。

AI Select でツールを使ったときに「SAM 3.1 is not set up」などと出る場合も、上の表のコードに対応しています。環境設定 › SAM 3.1 の状態欄を確認してください。

8. オフライン導入・削除

SAM 3 本体をオフラインで入れる

GitHub の facebookresearch/sam3 の一式(pyproject.toml を含むフォルダー)を ルートフォルダー\runtime\sam3-src に置くと、SAM 3 本体はそこから導入されます。ただし PyTorch などの部品はネットワークからのダウンロードが必要です。

削除する

  1. 環境設定 › SAM 3.1 で「停止」を押してワーカーを止めます。
  2. ルートフォルダーを丸ごと削除します(専用環境もモデルもこの中だけにあり、LoomStroke 本体や他の Python には影響しません)。
  3. 環境設定 › SAM 3.1 のルートフォルダー欄を空にして OK を押します。

SAM 3.1 のモデルの利用条件は、Hugging Face の facebook/sam3.1 のページで確認してください。

2026-10-16 時点の LoomStroke 開発版の実装に基づいて作成しています。説明書に戻る